CASE 導入事例

学校法人上智学院 上智大学 理工学部 機能創造理工学科様

メニーコアCPU搭載ワークステーションで、数値流体シミュレーションの高速化を図る

超高温物理の最前線を研究

上智大学 理工学部 機能創造理工学科では、キーテーマのひとつとして「物質の理解と材料・デバイスの創生」を掲げる。主要な専門分野の一つは超高温物質「クォークグルーオンプラズマ」の物理の研究だ。

 

上智大学キャンパス


クォークグルーオンプラズマは、高温・高密度状態において存在すると予想されているクォークおよびグルーオンからなるプラズマ状態を指し、ビッグバン(宇宙のはじまり)直後は、宇宙全体がこのクォークグルーオンプラズマで満たされるほどの高温だったことがわかっている。

数兆度という高温物質では、原子核を構成する陽子や中性子ですらバラバラに壊れ、強い力で記述される素粒子「クォーク」と「グルーオン」でできた物質であるクォークグルーオンプラズマが生成される。

周長約3.8kmのリングから成るRHIC(相対論的重イオン衝突型加速器)や周長約27kmのLHC(大型ハドロン衝突型加速器)を用い、原子核同士を光速近くまで加速し衝突させることによって、原子核が持っている大きな運動エネルギーを熱エネルギーに転化し、ビッグバン直後のような超高温を実現している。

 

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【相対論的流体力学を用いた重イオン衝突反応におけるクォークグルーオンプラズマ生成の様子(作成:金久保 優花氏)】

 

生成されたクォークグルーオンプラズマを相対論的に振る舞う流体として扱うことによって、「完全流体」のように振る舞うことが明らかになった。クォークグルーオンプラズマの解析には非定常的な時間発展、かつ、空間の多次元性が重要な鍵となるため、数値流体シミュレーションが威力を発揮する。

 

大量の事象解析には演算性能が大きく影響

シミュレーションはC++言語で開発したプログラムを中心に、部分的にオープンソースを利用し行われている。同分野の研究用として作られた数多くのプログラムが広く共有されていることが背景にある。

実験では、衝突反応の事象を大量に発生させることから、その解析にはモンテカルロ法による数値実験が行われる。モンテカルロ法は、いわば乱数を使った数値実験のことで確率的に起こる事象をシミュレーションする数値計算だ。

数値計算は長時間の演算が不可欠であり、CPUの演算性能と記憶容量の制約を受ける。このため、ワークステーションに求める要件としてはCPUのコア数とスレッド数が最も重視される。また、解析の新しいアイデアが浮かんだときに衝突事象のデータを再度利用するため、保存用に大容量のストレージも必要だ。

2021年5月、これまで使用してきたワークステーションよりもさらに高性能なマシンの調達を計画。世界的な半導体不足がコンピューターをはじめ各方面に影響が出始めるなか、過去に数台のワークステーションをオーダーしているファナティックに構成と見積依頼を打診した。

 

24コアのXeonと28コアのEPYCを採用

利用用途をすでに把握しているため、ワークステーションの仕様・構成のおおまかなプランはすぐに固まったが、希望納期にあわせて早急に調達可能なCPUの選定がカギとなった。予算を考慮したうえで24コア/48スレッドのIntel Xeon Gold 6248Rを選択、またメモリー容量は192GBとした。

過去に導入したワークステーションが静音性に優れ使い勝手がよいと評価。研究室で行われる数値実験では3~4日間連続して稼働することもあるため、同様に稼働音が抑えられることも考慮した提案となった。主な構成は下記のとおり。

  • CPU:Intel Xeon Gold 6248R(24C/48T) x2
  • 192GB(16GB x12)DDR4 2933MHz ECC RDIMM ※空きスロット4
  • ストレージ1:240GB SSD x2
  • ストレージ2:14TB HDD x6
  • さらに追加のワークステーションを用意する必要があり、これにはパフォーマンスの確認もかねてはじめてAMD製CPUを採用し下記の構成とした。

  • CPU:AMD EPYC Milan 7453(28C/56T)
  • メモリー:256GB(32GB x8)DDR4 3200MHz ECC RDIMM
  • ストレージ1:240GB SSD x2
  • ストレージ2:12TB HDD x5
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    理工学部教授 平野 哲文氏・博士後期課程3年 金久保 優花氏

    理工学部教授 平野 哲文氏・博士後期課程3年 金久保 優花氏

     

    新たに導入したことで、現在研究室には7台のワークステーションが稼働している。衝突事象の数値実験データを集約して解析を行う場合に、データをネットワーク越しに移動する必要があるため時間がかかることが新たな問題として浮上している。

    近い将来、ファイルサーバーと計算ノードでクラスタシステムを構築する予定だという。また、現在は適切なプログラムの調査を進めており、GPUを使った解析を行う計画も構想している。

     

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